4seasons

秋の詩

立原道造 「やがて秋……」(詩集『暁と夕の詩』より)

やがて秋…… やがて 秋が 来るだらう 夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ 樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに あらはなかげをくらく夜の方に投げ す...
夏の詩

立原道造 「夏花の歌」(詩集『萱草に寄す』より)

夏花の歌   その一 空と牧場のあひだから ひとつの雲が湧きおこり 小川の水面に かげをおとす 水の底には ひとつの魚が 身をくねらせて 日に光る...
春の詩

立原道造 「燕の歌」「うたふやうにゆつくりと‥‥」(詩集『優しき歌Ⅰ』より)

燕の歌      春来にけらし春よ春        まだ白雪の積れども               ――草枕 灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつ...
冬の詩

高村光太郎 「冬が来た」(詩集『道程』より)

冬が来た きつぱりと冬が来た 八つ手の白い花も消え 公孫樹いてふの木も箒ほうきになった きりきりともみ込むような冬が来た 人にいやがられる冬 ...
冬の詩

高村光太郎 「樹下の二人」(詩集『智恵子抄』より)

樹下の二人 ――みちのくの安達が原の二本松松の根かたに人立てる見ゆ―― あれが阿多多羅山(あたたらやま)、 あの光るのが阿武隈川。 かうやつて言葉す...
秋の詩

高村光太郎 「レモン哀歌」(詩集『智恵子抄』より)

レモン哀歌 そんなにもあなたはレモンを待つてゐた かなしく白くあかるい死の床で わたしの手からとつた一つのレモンを あなたのきれいな歯ががりりと噛ん...
夏の詩

高村光太郎 「人に」(詩集『智恵子抄』より)

人に 遊びぢやない 暇つぶしぢやない あなたが私に会ひに来る ――画もかかず、本も読まず、仕事もせず―― そして二日でも、三日でも 笑ひ、戯れ、飛び...
春の詩

高村光太郎 「あどけない話」(詩集『智恵子抄』より)

あどけない話 智恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ。 私は驚いて空を見る。 桜若葉の間に在るのは、 切つても切れない むかし...
冬の詩

中原中也 「汚れつちまつた悲しみに……」(詩集『山羊の歌』より)

汚れつちまつた悲しみに…… 汚れつちまつた悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる 汚れつちまつた悲しみは...
秋の詩

中原中也 「蜻蛉に寄す」(詩集『在りし日の歌』より)

蜻蛉に寄す あんまり晴れてる 秋の空 赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる 淡(あは)い夕陽を 浴びながら 僕は野原に 立つてゐる 遠くに工場の 煙突...
秋の詩

中原中也 「一つのメルヘン」(詩集『在りし日の歌』より)

一つのメルヘン 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 ...
夏の詩

中原中也 「夏の日の歌」(詩集『山羊の歌』より)

夏の日の歌 青い空は動かない、 雲片(ぎれ)一つあるでない。   夏の真昼の静かには   タールの光も清くなる。 夏の空には何かがある、 いぢら...
春の詩

中原中也 「また来ん春……」(詩集『在りし日の歌』より)

また来ん春…… また来ん春と人は云ふ しかし私は辛いのだ 春が来たつて何になろ あの子が返つて来るぢやない おもへば今年の五月には おまへを抱い...
春の詩

中原中也 「春と赤ン坊」「雲雀」(詩集『在りし日の歌』より)

春と赤ン坊 菜の花畑で眠つてゐるのは…… 菜の花畑で吹かれてゐるのは…… 赤ン坊ではないでせうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です ひねも...
冬の詩

萩原朔太郎 「竹」(詩集『月に吠える』より)

竹 ますぐなるもの地面に生え、 するどき青きもの地面に生え、 凍れる冬をつらぬきて、 そのみどり葉光る朝の空路に、 なみだたれ、 なみだをたれ、...
秋の詩

萩原朔太郎 「蝶を夢む」(詩集『蝶を夢む』より)

蝶を夢む 座敷のなかで 大きなあつぼつたい翼はねをひろげる 蝶のちひさな 醜い顏とその長い觸手と 紙のやうにひろがる あつぼつたいつばさの重みと。 わた...
秋の詩

萩原朔太郎 「廣瀬川」「晩秋」(詩集『純情小曲集』『氷島』より)

廣瀬川 廣瀬川白く流れたり 時されば皆幻想は消え行かむ。 われの生涯らいふを釣らんとして 過去の日川邊に糸をたれしが ああかの幸福は遠きにすぎさり ...
夏の詩

萩原朔太郎 「中學の校庭」(詩集『純情小曲集』より)

中學の校庭 われの中學にありたる日は 艶なまめく情熱になやみたり いかりて書物をなげすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに...
春の詩

萩原朔太郎 「旅上」「五月の貴公子」(詩集『純情小曲集』『月に吠える』より)

旅上 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓...
冬の詩

三好達治 「雪」(詩集『測量船』より)

雪 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。 作者と作品について 作者三好 達治(みよし たつじ) 19...
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