萩原朔太郎 「竹」(詩集『月に吠える』より)

ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。

光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。

      ○

  みよすべての罪はしるされたり、
  されどすべては我にあらざりき、
  まことにわれに現はれしは、
  かげなき青き炎の幻影のみ、
  雪の上に消えさる哀傷の幽霊のみ、
  ああかかる日のせつなる懺悔をも何かせむ、
  すべては青きほのほの幻影のみ。

作者と作品について

  • 作者

萩原 朔太郎(はぎわら さくたろう)
1886年(明治19年)~1942年(昭和17年)
群馬県生まれ

  • 作品

「竹」は、詩集『月に吠える』に収められています。
『月に吠える』は第一詩集で、口語自由詩を確立した詩集として知られています。

「竹」という詩では、青い竹が凍える冬にまっすぐするどく生えていく一方で、地下では根や繊毛がふるえるように生えていきます。
青い竹が詩の表現だとすれば、根や繊毛は、詩人の奥にある繊細な神経を象徴しているような気がします。
他にもさまざまな解釈ができるかもしれませんね。

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