蜻蛉に寄す
あんまり晴れてる 秋の空
赤い
僕は野原に 立つてゐる
遠くに工場の 煙突が
夕陽にかすんで みえてゐる
大きな溜息 一つついて
僕は
その石くれの 冷たさが
漸く
僕は
夕陽を浴びてる 草を抜く
抜かれた草は 土の上で
ほのかほのかに
遠くに工場の 煙突は
夕陽に
作者と作品について
- 作者
中原 中也(なかはら ちゅうや)
1907年(明治40年)~1937年(昭和12年)
山口県生まれ
- 作品
「蜻蛉に寄す」は、詩集『在りし日の歌』に収められています。
中也は、春夏秋冬、さまざまな季節の詩をうたっています。
秋を描いた詩も沢山あるのですが、そのなかでも親しみやすい作品だと思います。
七五調のリズムで、どこにもありそうな風景が描かれています。
でも、なんで溜息をついているのか、なんで草を抜いているのかなど、そんな背景を想像してみると、この詩は奥深くなるのかもしれませんね。
中也の詩には、多くは語っていないのに、何かが伝わってくる作品が沢山あるように思います。