汚れつちまつた悲しみに……
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……
作者と作品について
- 作者
中原 中也(なかはら ちゅうや)
1907年(明治40年)~1937年(昭和12年)
山口県生まれ
- 作品
「汚れつちまつた悲しみに……」は、詩集『山羊の歌』に収められています。
とても有名な詩ですね。
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
この詩でリフレインされている、「汚れちまつた」の主語は、何も書かれていません。
中也自身が汚れてしまったのかもしれないし、悲しみそのものが汚れてしまったのかもしれません。
何も書かれていないからこそ、その背景にある感情が伝わってくるような気がします。
リズムに乗っていても、どこかぶっきらぼうな口調からも、かなしみが感じられます。
リフレインが、まるで降りかかる雪のようですね。