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室生犀星 「三月」「ふるさと」「寂しき春」(詩集『抒情小曲集』より)

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三月

うすければ青くぎんいろに
さくらも紅く咲くなみに
三月こな雪ふりしきる

雪かきよせて手にとれば
手にとるひまに消えにけり
なにを哀しと言ひうるものぞ
君が朱なるてぶくろに
雪もうすらにとけゆけり

ふるさと

雪あたたかくとけにけり
しとしとしとと融けゆけり
ひとりつつしみふかく
やはらかく
木の芽に息をふきかけり
もえよ
木の芽のうすみどり
もえよ
木の芽のうすみどり

寂しき春

したたり止まぬ日のひかり
うつうつまはる水ぐるま
あをぞらに
越後の山も見ゆるぞ
さびしいぞ
一日いちにちもの言はず
野にいでてあゆめば
菜種のはなは波をつくりて
いまははや
しんにさびしいぞ

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作者と作品について

  • 作者

室生 犀星(むろう さいせい)
1889年(明治22年)~1962年(昭和37年)
石川県金沢市生まれ

  • 作品

「三月」「ふるさと」「寂しき春」は、詩集『抒情小曲集』の第一部に収められています。

犀星は生後すぐに養子に出されるという、暗い生い立ちをもちますが、不遇と貧窮のなかで文学に目覚めます。
そして20歳のときに上京し、沢山の詩を作りました。

詩集『抒情小曲集』には、そんな犀星の20歳から24歳ころまでの作品が掲載されています。
そこには故郷への強く深い思いと、繊細な情感であふれています。

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