山村暮鳥 「西瓜の詩」(詩集『雲』より)

西瓜の詩

農家のまひるは
ひつそりと
西瓜のるすばんだ
でつかい奴がごろんと一つ
座敷のまんなかにころがつてゐる
おい、泥棒がへえるぞ
わたしが西瓜だつたら
どうして噴出さずにゐられたらう

おなじく

座敷のまんなかに
西瓜が一つ
畑のつもりで
ころがつてる

びんばふだといふか(※)

おなじく

かうして一しよに
裸體まるはだかでごろごろ
ねころがつたりしてゐると
おまへもまた
家族のひとりだ
西瓜よ
なんとか言つたらよかんべ

おなじく

どうも不思議で
たまらない
叩かれると
西瓜め
ぽこぽこといふ

おなじく

みんな
あつまれ
あつまれ
西瓜をまんなかにして
そのまはりに

さあ、合掌しろ

おなじく

みんな
あつまれ
あつまれ
そしてぐるりと
輪を
いま
眞二つになる西瓜だ

※いふかの「い」の字は「口+云」。

作者と作品について

  • 作者

山村 暮鳥(やまむら ぼちょう)
1884年(明治17年)~1924年(大正13年)
群馬県生まれ

  • 作品

「西瓜の詩」の連作は、詩集『雲』に収められています。
あんまり面白いので、全部引用してしまいました。

西瓜が家にころがっていることが、まるで大事件のよう!
そういえば私が小さい頃も、大玉の西瓜が家にくるのが、真夏のビックイベントだったということを思いました。
きっとどの家庭でもありそうな、懐かしい光景なのかもしれませんね。

この連作は、西瓜が真っ二つになるか!というところで終わっていて、真っ赤な色が現れるところも、それをみんなで食べるところも、描かれてはいないんですよね。
なのに読んでいるだけで、あの赤く滴るような甘さが舌によみがえってきます。

西瓜を家族と言うところも、ぽこぽこ叩くところも、合掌するところも、何からなにまで面白いです。

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