金子みすゞ 「朝顔の蔓」「たもと」「向日葵(ひまわり)」(『金子みすゞ全集』より)

朝顔の蔓

垣がひくうて
朝顔は、
どこへすがろと
さがしてる。

西もひがしも
みんなみて、
さがしあぐねて
かんがえる。

それでも
お日さまこいしゅうて、
きょうも一寸
また伸びる。

伸びろ、朝顔、
まっすぐに、
納屋のひさしが
もう近い。

たもと

たもとのゆかたは
うれしいな
よそ行き見たいな気がするよ。

夕顔の
花の明るい背戸せどへ出て
そっと踊りの真似をする。

とん、と、叩いて、手を入れて
たれか来たか、と、ちょいと見る。

藍の匂の新しい
ゆかたの袂は
うれしいな。

向日葵(ひまわり)

おてんとさまの車の
黄金きんのきれいな車の輪。

青い空をゆくときは、
黄金きんのひびきをたてました。

白い雲をゆくときに、
見たは小さな黒い星。
天でも地でも誰知らぬ、
黒い星を轢くまいと、
急に曲った車の輪。

おてんとさまはほり出され、
真赤になってお腹立ち、
黄金きんのきれいな車の輪、
はるか下界へすてられた、
むかし、むかしにすてられた。

いまも、黄金こがねの車の輪、
お日をしとうてまわります。

作者と作品について

  • 作者

金子 みすゞ(かねこ みすず)
1903年(明治36年)~1930年(昭和5年)
山口県生まれ

  • 作品

みすゞさんの夏の詩で、花が描かれているものを中心に集めてみました。

「朝顔の蔓」は、誰もが注目するような「花」じゃなくて、目立たない「蔓」が描かれているところがいいです。
この蔓が、お日さま恋しさに一生懸命伸びようとしているのを見ていると、こちらまで拳に力をこめて、「がんばれ」と応援したくなります。

「たもと」は、可愛い詩ですね。
私も小さいころ、浴衣を着たとき、こんな風に踊りの真似をした記憶があります。
誰も見ていないはずなのに、誰かの目が気になっちゃうんですよね。「見て見て!」という思いと、「照れる」という思いが、入り混じっている感じ。懐かしいです。
みすゞさんは、大人になってからも子どもの気持ちを持っている、天性の詩人ですね。

「向日葵」は、天界と下界をめぐるファンタジー。
みすゞさんの詩は、身近なものだけでなく、太陽や星の世界を歌っているものも多いです。

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