室生犀星

冬の詩

室生犀星 「切なき思いぞ知る」(詩集『鶴』より)

切なき思ひぞ知る 我は張り詰めたる氷を愛す。 斯かかる切なき思ひを愛す。 我はその虹にじのごとく輝けるを見たり。 斯る花にあらざる花を愛す。 我は氷の...
秋の詩

室生犀星 「秋の日」「小曲」「月草」「くらげ」「静かなる空」「朱き葉」(詩集『抒情小曲集』より)

秋の日 つかの間に消え去りし つかの間に消え去りしは あきつのかげにあらざるか ぐらすのごとき秋の日に かげうち過ぐるもの わが君のかげにあらざ...
秋の詩

室生犀星 「時無草」「秋の終り」(詩集『抒情小曲集』より)

時無草 秋のひかりにみどりぐむ ときなし草は摘みもたまふな やさしく日南にのびてゆくみどり そのゆめもつめたく ひかりは水のほとりにしづみたり とも...
夏の詩

室生犀星 「夏の朝」「砂山の雨」「蝉頃」(詩集『抒情小曲集』より)

夏の朝 なにといふ虫かしらねど 時計の玻璃のつめたきに這ひのぼり つうつうと啼く ものいへぬむしけらものの悲しさに 砂山の雨 砂山に雨の消えゆく...
春の詩

室生犀星 「はる」「桜咲くところ」「万人の孤独」「蒼空」(詩集『愛の詩集』より)

はる おれがいつも詩をかいてゐると 永遠がやつて来て ひたひに何かしらなすつて行く 手をやつて見るけれど すこしのあとも残さない素早い奴だ おれはい...
春の詩

室生犀星 「三月」「ふるさと」「寂しき春」(詩集『抒情小曲集』より)

三月 うすければ青くぎんいろに さくらも紅く咲くなみに 三月こな雪ふりしきる 雪かきよせて手にとれば 手にとるひまに消えにけり なにを哀しと言ひ...
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