日々のくらしに季節の彩りを……
春夏秋冬を感じさせる詩を、四季ごとにまとめました。
国語の教科書にのっているような、有名詩人の作品が中心です。
タグ:八木重吉
冬の詩
冬
木に眼(め)が生(な)って人を見ている
冬
悲しく投げやりな気持でいると
ものに驚かない
冬をうつくしいとだけおもっている
冬日(ふゆび)
冬の日はうすいけれど
明るく
涙も出なくなってしまった私をいたわってくれる
霜(しも)
地はうつくしい気持をはりきって耐(こ)らえて
秋の詩
秋
こころがたかぶってくる
わたしが花のそばへいって咲けといえば
花がひらくとおもわれてくる
果物
秋になると
果物はなにもかも忘れてしまって
うっとりと実(み)のってゆくらしい
壁
秋だ
草はすっかり色づいた
壁のところへいって
じぶんのきもちにききいっていたい
障子
秋の詩
秋の かなしみ
わがこころ
そこの そこより
わらひたき
あきの かなしみ
あきくれば
かなしみの
みなも おかしく
かくも なやまし
みみと めと
はなと くち
いちめんに
くすぐる あきのかなしみ
草の 実
実(み)!
ひとつぶの あさがほの 実
さぶしいだらうな、
夏の詩
水や草は いい方方(かたがた)である
はつ夏の
さむいひかげに田圃(たんぼ)がある
そのまわりに
ちさい ながれがある
草が 水のそばにはえてる
みいんな いいかたがたばかりだ
わたしみたいなものは
顔がなくなるようなきがした
かなかな
かなかなが 鳴く
こころは
むら
春の詩
花がふってくると思う
花がふってくると思う
花がふってくるとおもう
この てのひらにうけとろうとおもう
花
おとなしくして居(い)ると
花花が咲くのねって 桃子が言う
桜
綺麗な桜の花をみていると
そのひとすじの気持ちにうたれる
陽遊(かげろう)
さすがにもう春だ
春の詩
春も 晩く
春も おそく
どこともないが
大空に 水が わくのか
水が ながれるのか
なんとはなく
まともにはみられぬ こころだ
大空に わくのは
おもたい水なのか
おもひなき 哀しさ
はるの日の
わづかに わづかに霧(き)れるよくはれし野をあゆむ
ああ おもひ