萩原朔太郎

冬の詩

萩原朔太郎 「竹」(詩集『月に吠える』より)

竹 ますぐなるもの地面に生え、 するどき青きもの地面に生え、 凍れる冬をつらぬきて、 そのみどり葉光る朝の空路に、 なみだたれ、 なみだをたれ、...
秋の詩

萩原朔太郎 「蝶を夢む」(詩集『蝶を夢む』より)

蝶を夢む 座敷のなかで 大きなあつぼつたい翼はねをひろげる 蝶のちひさな 醜い顏とその長い觸手と 紙のやうにひろがる あつぼつたいつばさの重みと。 わた...
秋の詩

萩原朔太郎 「廣瀬川」「晩秋」(詩集『純情小曲集』『氷島』より)

廣瀬川 廣瀬川白く流れたり 時されば皆幻想は消え行かむ。 われの生涯らいふを釣らんとして 過去の日川邊に糸をたれしが ああかの幸福は遠きにすぎさり ...
夏の詩

萩原朔太郎 「中學の校庭」(詩集『純情小曲集』より)

中學の校庭 われの中學にありたる日は 艶なまめく情熱になやみたり いかりて書物をなげすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに...
春の詩

萩原朔太郎 「旅上」「五月の貴公子」(詩集『純情小曲集』『月に吠える』より)

旅上 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓...
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