中原中也

冬の詩

中原中也 「汚れつちまつた悲しみに……」(詩集『山羊の歌』より)

汚れつちまつた悲しみに…… 汚れつちまつた悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる 汚れつちまつた悲しみは...
秋の詩

中原中也 「蜻蛉に寄す」(詩集『在りし日の歌』より)

蜻蛉に寄す あんまり晴れてる 秋の空 赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる 淡(あは)い夕陽を 浴びながら 僕は野原に 立つてゐる 遠くに工場の 煙突...
秋の詩

中原中也 「一つのメルヘン」(詩集『在りし日の歌』より)

一つのメルヘン 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 ...
夏の詩

中原中也 「夏の日の歌」(詩集『山羊の歌』より)

夏の日の歌 青い空は動かない、 雲片(ぎれ)一つあるでない。   夏の真昼の静かには   タールの光も清くなる。 夏の空には何かがある、 いぢら...
春の詩

中原中也 「また来ん春……」(詩集『在りし日の歌』より)

また来ん春…… また来ん春と人は云ふ しかし私は辛いのだ 春が来たつて何になろ あの子が返つて来るぢやない おもへば今年の五月には おまへを抱い...
春の詩

中原中也 「春と赤ン坊」「雲雀」(詩集『在りし日の歌』より)

春と赤ン坊 菜の花畑で眠つてゐるのは…… 菜の花畑で吹かれてゐるのは…… 赤ン坊ではないでせうか? いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です ひねも...
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