大晦日と元日


兄さまは掛取り、
母さまはお飾り、
わたしはお歳暮。
町じゅうに人が急いで、
町じゅうにお日があたって、
町じゅうになにか光って。

うす水いろの空の上、
(とんび)は静かに輪を描(か)いてた。

兄さまは紋付き、
母さまもよそゆき、
わたしもたもとの。
町じゅうに人があそんで、
町じゅうに松が立ってて、
町じゅうに霰が散ってて。

うす墨いろの空の上、
鳶は大きく輪をかいてた。

夢売り


年のはじめに
夢売りは、
よい初夢を
売りにくる。

たからの船に
山のよう、
よい初夢を
積んでくる。

そしてやさしい
夢売りは、
夢の買えない
うら町の、
さびしい子等(ら)
ところへも、
だまって夢を
おいてゆく。



作者と作品について


  • 作者
金子 みすゞ(かねこ みすず)
1903年(明治36年)~1930年(昭和5年)
山口県生まれ

  • 作品
みすゞさんの、大晦日と元日の詩です。

「大晦日と元日」は、大晦日と元日で、空気ががらっと変化するさまが、肌で感じられるようです。
大晦日の空はうす水いろで、町じゅうに何かが光っていて、
元旦の空はうす墨いろで、町じゅうに霰が散っているんですね。
これがもし逆だったら、どんなイメージになるんだろう?と、想像してしまいました。

それから、「夢売り」は、さびしい子等のところにも、だまって夢をおいていくのが優しいなと思いました。
この詩自体が、夢があっていいですね。

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