芝草


名は芝草というけれど、
その名をよんだことはない。

それはほんとにつまらない、
みじかいくせに、そこら中、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、
とても抜けない、つよい草。

げんげは紅い花がさく、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。

けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたし等(ら)は、
どこへ腰かけ、どこへ寝よう。

青い、丈夫な、やわらかな、
たのしいねどこよ、芝草よ。

げんげの葉の唄


花は摘まれて
どこへゆく

ここには青い空があり
うたう雲雀があるけれど

あのたのしげな旅びとの
風のゆくてが
おもわれる

花のつけ根をさぐってる
あの愛らしい手のなかに
私を摘む手は
ないか知(し)

げんげ


雲雀聴き聴き摘んでたら、
にぎり切れなくなりました。

持ってかえればしおれます、
しおれりゃ、誰かが捨てましょう。
きのうのように、芥箱(ごみばこ)へ。

私はかえるみちみちで、
花のないとこみつけては、
はらり、はらりと、撒(ま)きました。
――春のつかいのするように。

仲なおり


げんげのあぜみち、春がすみ、
むこうにあの子が立っていた。

あの子はげんげを持っていた、
わたしも、げんげを摘んでいた。

あの子が笑う、と、気がつけば、
私も知らずに笑ってた。

げんげのあぜみち、春がすみ、
ピイチク雲雀が啼いていた。



作者と作品について


  • 作者
金子 みすゞ(かねこ みすず)
1903年(明治36年)~1930年(昭和5年)
山口県生まれ

  • 作品
みすゞさんの詩のなかでも、「げんげ」が出てくる詩を集めてみました。
「げんげ」は、蓮華草のことです。

みすゞさんの詩は、目立たない物や場所にも、優しい眼差しを向けているものが多いです。
「芝草」は芝草に、「げんげの葉の唄」はげんげの葉っぱに、「げんげ」は花のないとこに、ほんのりとスポットライトが当たっています。
脇役などない、みんなが主役の世界ですね。

「仲なおり」は、このタイトルから考えると、以前はケンカしてしまった二人のお話しなのでしょうか。
そんな二人が、げんげのあぜみちで自然と笑いあっているのに、ほっとさせられます。

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