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山村暮鳥 「春の河」「蝶々」(詩集『雲』より)

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春の河

たつぷりと
春の河は
ながれてゐるのか
ゐないのか
ういてゐる
藁くづのうごくので
それとしられる

おなじく

春の、田舍の
大きな河をみるよろこび
そのよろこびを
ゆつたりと雲のやうに
ほがらかに
飽かずながして
それをまたよろこんでみてゐる

おなじく

たつぷりと
春は
小さな川々まで
あふれてゐる
あふれてゐる

蝶々

ふかい
ふかい
なんともいへず
此處はどこだらう
あ、蝶々

おなじく

青空たかく
たかく
どこまでも、どこまでも
舞ひあがつていつた蝶々
あの二つの蝶々
あれつきり
もうかへつては來なかつたか

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作者と作品について

  • 作者

山村 暮鳥(やまむら ぼちょう)
1884年(明治17年)~1924年(大正13年)
群馬県生まれ

  • 作品

「春の河」と「蝶々」の連作は、詩集『雲』の冒頭部分に載せられています。
『雲』は暮鳥が編集したなかでも最後の詩集で、亡くなられた後に出版されています。

暮鳥の晩年の詩は、無駄なかざりや汚れを落としきった、心そのまんまの詩が多いです。

「春の河」も「蝶々」も、春のなつかしい原風景が目に浮かぶような詩ですね。
下手な解説をすると、手垢がついてしまいそうなので、そのまま味わっていただけたらなと思います。

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