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八木重吉 「水や草はいい方々である」「かなかな」「西瓜を喰おう」「稲妻」(詩集『秋の瞳』『貧しき信徒』より)

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水や草は いい方方かたがたである

はつ夏の
さむいひかげに田圃たんぼがある
そのまわりに
ちさい ながれがある
草が 水のそばにはえてる
みいんな いいかたがたばかりだ
わたしみたいなものは
顔がなくなるようなきがした

かなかな

かなかなが 鳴く
こころは
むらがりおこり
やがて すべられて
ひたすらに 幼く 澄む

西瓜を喰おう

西瓜をくおう
西瓜のことをかんがえると
そこだけ明るく 光ったようにおもわれる
はやく 喰おう

稲妻

くらい よる、
ひとりで 稲妻をみた
そして いそいで ペンをとつた
わたしのうちにも
いなづまに似た ひらめきがあるとおもつたので、
しかし だめでした
わたしは たまらなく
歯をくひしばつて つつぷしてしまつた

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作者と作品について

  • 作者

八木 重吉(やぎ じゅうきち)
1898年~1927年
東京生まれ

  • 作品

「稲妻」は、第一詩集『秋の瞳』に、「水や草は いい方々である」「かなかな」「西瓜を喰おう」は、第二詩集の『貧しき信徒』に掲載されています。

ところで、「かなかな」も「西瓜」も「稲妻」も、今では夏の風物詩のように思いますが、実はすべて秋の季語なんですよね……
旧暦の方が、季節感を先取りしているんですね。

「稲妻」のような、詩人ならではの作品にも共感を覚えます。

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